金融経済教育推進機構について
資産所得倍増プランと7本柱
「資産所得倍増プラン」の目的
岸田政権では「新しい資本主義」に向けた取り組みを進めており、国民の安定的な資産形成支援の拡充策として、「資産所得倍増プラン」を策定しました。
同プランでは、日本における中間層の投資環境の整備を通じて、家計金融資産が企業に還流され、企業はそれを原資として成長を促進させ、企業価値を向上させ、ひいては家計の金融資産に還元されるという「成長と所得の好循環」が実現されるとしました。
「資産所得倍増プラン」の柱
同プランでは、政策を実現させるため「7本の柱」の具体的取り組みを推進していくことを掲げました
- 第一の柱:NISAの抜本的拡充・恒久化
- 第二の柱: iDeCo制度の改革
- 第三の柱:中立的で信頼できるアドバイスを提供するための仕組みの創設
- 第四の柱:雇用者に対する資産形成の強化
- 第五の柱:金融経済教育の充実
- 第六の柱:世界に開かれた国際金融センターの実現
- 第七の柱:顧客本位の業務運営の確保
金融経済教育推進機構は、『第三~第五の柱」の施策を具体化させるための組織になります。
機構は2024年中に設立
金融広報中央委員会の機能を移管・承継するほか、運営体制の整備や設立・運営経費の確保にあたっては、政府・日銀に加え、全銀協・日証協等の民間団体からの協力も得て、設立されることとなっています。
機構の主な事業
- 中立的アドバイザーの認定・公表(リスト化)
- 認定中立アドバイザーに対する支援(補助金・研修)
- 個人への個別相談(ライフプラン等に係る一般的な情報提供)
- 学校・企業向けの出張授業やシンポジウムの開催
- 教材/コンテンツ/統計資料の作成
機構の設立に加え、「中立的アドバイザーの認定」にあたり、投資助言業の登録に関する規制緩和や、補助金の投入が検討されています。
中立的アドバイザーとは
「中立」の定義については、金融庁の審議会「顧客本位タスクフォース」内で議論されていますが、はっきりとした定義は確立していない状態です。ただ、中間報告書において、中立の基準として、以下の点に言及されています。
- アドバイザーが金融商品の販売を行う金融事業を兼業しない
- 家計の全体最適とポートフォリオ最適化の観点から、幅広い金融商品を対象としたアドバイスが可能かどうか
- 金融商品の組成・販売会社からの手数料を受けていない
なので、金融機関に所属している職員、保険代理店の職員、IFAなどの特定の金融機関とのつながりがある者は認定されない可能性が高そうです。
一方で、我が国でこれまで、中立的なアドバイザー活動で生計を立てることは極めて難しいことから、規制緩和や補助金投入が検討されています。
投資助言業の登録について
投資助言業を登録すると、顧客に対して有価証券の価値や金融商品の価値の分析に基づく投資助言(アドバイス)を行うことができるようになりますが、登録までの事務的・金銭的なハードルはとても高くなっています。
そもそも投資助言業とは
投資助言・代理業の登録を受けてできる業務は、
- 顧客に対し有価証券の価値等又は金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に関し助言(アドバイス)を行うこと
- 投資顧問契約又は投資一任契約の締結の代理又は媒介を行うこと
です。
投資助言業は、顧客に対して投資顧問契約に基づき、有価証券の価値等又は金融商品の価値等(デリバティブ取引を含む)の分析に基づく投資判断に関し、助言を行うものであり、代理業は投資顧問契約又は投資一任契約の締結の代理又は媒介を行うものですから、法律等を遵守し、投資者の保護を図ることが必要です。
出所:関東財務局「投資助言・代理業関係」
登録申請手続き
- 事前相談
- 申請書の提出
- 登録
- 営業保証金の供託
- 営業保証金供託の届出
- 金融ADR対応
- 業務開始
申請にかかる費用
登録申請時に、登録免許税が15万円。また、登録を受けた後、供託所へ営業保証金500万円の供託が必要です。
ハードルが高いがゆえに、中立的アドバイザーの担い手が不足してしまう
機構が認定するアドバイザーがビジネスとして中立的な助言業務が成立する環境を整備しなければ、アドバイザーの担い手が不足してしまいます。
機構の事業ができず、絵に描いた餅状態となるため、まずは投資助言業の登録要件を緩和する検討がなされている状態です。
具体的にはどのような規制緩和が検討されている?
助言対象を絞った投資助言業(つみたてNISAやiDeCoにおける投資商品に限定)の登録要件の緩和が検討されています。
中立的アドバイザーはどこで活躍するのか
職域における活用を企業に促す
背景
「資産所得倍増プラン」では、企業による雇用者への資産形成の強化を提唱しており、その中で中立的な認定アドバイザーを活用することを想定しています。
なんで会社が?
企業における雇用者への資産形成の強化が、雇用者の満足度の向上、定着率の向上、金銭的ストレスの軽減といった効果が指摘されている(出所:2020 EBRI Financial Wellbeing Employer Survey: October 22, 2020 EBRI ISSUE BRIEF)が、多くの個人がその機会を十分に得られていないのが、現状である。なので、企業を通じて資産形成の強化を行う、というのが建前です。
一方で日本国民の中間層の大部分は企業人なので、職域を攻めればリテラシーが高まるという目論見のように思えます。
具体策は何か
資産所得倍増プランでは、雇用者が中立的な認定アドバイザーを活用する場合に、企業から雇用者に対して助成を行うことを後押しする。とされています。
(イメージ)
これに加え、「企業内に設置される雇用者向けの資産形成相談の場」で積極的に活用していくことを想定しているようです。
まとめると
- 金融経済教育推進機構は2024年中に設立される
- 機構は中立的なアドバイザーを認定する
- 認定アドバイザーは主に企業での活用が想定されている
- 認定アドバイザーに対する補助金、投資助言業の塘路貴規制緩和が検討されている
次回は国会審議の内容をピックアップしていきます!
FPとして事業の幅を広げるために
FPの有資格者が業務の幅を広げるために有用な情報をまとめましてので、ぜひこちらの記事もご覧ください!
(2024/1/28更新)金融経済教育推進機構の最新情報
FP独立支援【PR】
CFP,AFP,FP技能士1級~3級といったFP資格を持っている方々が、どうしたらFP相談・FPコンサルテーションを進められるか、すなわちFPの仕事を進められるかを習得するためのプログラムです。