金融行政について
金融庁では毎年、行政方針についてHPで公開しています。例年、8月下旬に公表され、今後1年間の金融行政の力点が示されるとともに、現状や進捗状況などを各種データを取りまとめた内容となっております。一見するとボリュームが多く、内容が難しいように思われるかもしれませんが、関連するパートのみ確認すればボリュームも少なく、また、内容も理解しやすい表現で構成されているので、読み進めることは難しくありません。
なお、直近の2022事務年度金融行政方針によれば、「貯蓄から投資」へのシフトを進め、成長の果実が国民に広く還元されることを通じて好循環を実現するための環境整備を行う、と提示しています。
「貯蓄から投資」へのシフトの現状は?
金融庁資料によると、我が国の家計金融資産は約2,000兆円で現預金比率は50%を超えています。一方で株式・投資信託の保有割合は20%にとどまっています。
野村総合研究所では、3年に1回「生活者1万人アンケート(金融編)」を実施していますが2022年調査(n=10,000)においては、投資経験を持つ回答者の割合が32%となり、10年前の20%から12ポイント増加しているとの報告がなされました。
近年、NISA制度(2014年1月~)やiDecoを中心としたDC(確定拠出年金)制度が充実してきたこともあり、10年前と比べると徐々に投資経験者が増加しているものの、依然として全体の70~80%は投資未経験である状況であることがわかります。
「貯蓄から投資へ」の実現に必要なこと
そうはいっても、投資未経験者にとっては、投資を始めるために証券会社へ足を運ぶことや、ネット証券等で口座を開設し、株式の売買を行うことは、ハードルが高いと思います。約15年前、私もネット証券で口座開設をして取引を始めるまでには、分からないことが多く戸惑うことも多かったです。
そもそも投資をする以前に、自身のライフイベントを踏まえた資産形成の必要性について本気で向き合っている人は決して多くはないでしょう。
なので、金融庁によれば、一人一人が自らのニーズやライフプランを検討し、それに合った金融商品・サービスを選択し、安定的な資産形成を実現するためには、「金融リテラシー向上」に向けた施策が極めて重要であると提示しています。学校や職場において、資産形成を含む金融経済教育を受ける機会が、今後求められていくところになるでしょう。
最近は投資ブームのような形で様々な投資手法が世の中にあふれています。貯蓄ではなく、あえて投資を行うのは、ライフイベントから逆算し、必要な資金を必要なタイミングまでに蓄えるための手法の一つとして行うものです。様々な金融サービスの中から自身に適合した商品を自らの判断で選択し、ライフイベントを消化していくことでより良い人生を歩んでいくためには、適切な判断を下すための金融リテラシー向上が必要となります。
出典:金融庁『2022事務年度金融行政方針について』
野村総合研究所『生活者1万人アンケート(金融編)』