学校・人事の方向け

【学校/高校】高校生で必要な金融教育について~学校における金融教育の年齢層別目標より~

出典・準拠

金融広報中央委員会の金融教育プログラム「学校における金融教育の年齢層別目標」【改訂版】の内容から、高校生の目指すべき姿の部分を抜粋し、まとめました。

「学校における金融教育の年齢層別目標」とは

金融教育を4つの分野に整理し、かつ、小学校低学年・中学年・高学年、中学校、高等学校の年齢層別の発達段階に即して整理したもの。

«4つの分野»

  1. 生活設計・家計管理に関する分野
  2. 金融や経済の仕組みに関する分野
  3. 消費生活・金融トラブル防止に関する分野
  4. キャリア教育に関する分野

① 高校生に求められる『生活設計・家計管理に関する分野』について

資金管理と意思決定

使える資源には限りがあることを理解する。限られた予算の下でよりよい生活を築く意義を理解し、実践する技能と態度を身に付ける

○資源の有限性、希少性を理解し、財やサービスの購入に当たって、よりよい選択ができる(公民、家庭)
○家計の収支構造を理解する(家庭)
○現在の自分の生活や教育などのために支払われている費用を知り、家計全体を意識して自分にかかわる支出を考える態度を身に付ける
○長期的・計画的な資金管理の大切さを理解する(家庭)
○学校行事等を通して実践的な収支管理ができる

資金管理に関する意思決定を理解し、実践する態度を身に付ける

○現代の消費生活の課題を認識し、消費者として適切な意思決定ができる(家庭)
○希少性、選択、トレード・オフ、機会費用、効率、公正などの概念を用いて、よりよい意思決定ができる(公民)

貯蓄の意義と資産運用

貯蓄の意義を理解し、貯蓄の習慣を身に付ける

○生涯を見通して資産形成を行う必要性を理解する(家庭)
○長期的に貯蓄・運用に取り組む態度を身に付ける
○期間と金利(複利)の関係を理解する(数学、商業)
○少額であっても定期的に貯蓄・運用し続けることが将来の備えとして有益であることを理解する

期間と金利の関係、貯蓄・運用を継続することの大切さを理解する

○預金、株式、債券、投資信託、保険等の基本的な金融商品の特徴を理解し、関連する世の中の動きに関心をもつ(公民、家庭)
○資金運用については、自己責任のもとで金融商品を選択する必要があることを理解する

金融商品のリスクとリターンを理解し、自己責任の下で運用する態度を身に付ける

○金融商品について、利益が出たり損失が出たりする特徴を踏まえて、リスクとリターンの関係について理解する(公民、数学)
○様々な金融商品に資金を分散するなどのリスク管理の方法について理解する
○金融商品については、目先の価格の動きに目を奪われず、長期的な視点から運用を考える必要があることを理解する
○どの程度のリスクをとることができるかは人によって異なることを理解する
○投資と投機、賭け事の違いについて理解する

生活設計

生活設計の必要性を理解し、将来を展望した自分の生活設計を立てることができる

○生涯収入や主な支出の内容について理解し、生活設計を立てる(家庭)

生活設計に必要な様々な知識を身に付け、それを活用して自分の暮らしを考える

○住宅ローンや貸与型の奨学金などのローンの仕組みを理解し、返済方法や金利、延滞時の影響について考える(数学、家庭)
○住宅等の実物資産は、利用などにより減価し、売却しにくいことを理解する
○年金や社会保障制度などを理解し、自分たちの暮らしの中での役割を考える(公民、家庭)
○景気や経済政策と暮らしとの関係を理解する(公民)

生活設計と職業選択を関係づけて自分の将来を現実的に考える

○職業選択と生活設計を関連付けて将来の自分の姿について考える(家庭)

事故・災害・病気などへの備え

日常生活における危険から身の安全を確保する方法を理解し、実践する

○日常生活において様々なリスクが存在することを理解し、リスクを予測し制御して行動する(保健体育<保健>、特別活動)

他人に損害を与える可能性を認識し、安全な行動を心がける

○二輪車や自動車の運転に伴い加害事故を起こした場合などには、責任や補償問題が生じることを理解する(保健体育<保健>)

事故や災害、病気など不測の事態に備える必要性とその方法を理解する

○病気や事故などのリスクが現実となった場合の家計の負担の大きさを認識し、リスク管理の方法を理解する(家庭)
○不測の事態に備える方法としての保険と貯蓄の機能の違いを理解する
○社会保険と民間保険の補完関係を理解する(公民)

② 高校生に求められる『金融や経済の仕組みに関する分野』について

お金や金銭の働き

お金の働きや役割を理解する

○貨幣の機能を理解する
○電子マネー等のキャッシュレス社会の進行について理解する(公民、家庭、商業)

金融機関の役割、中央銀行の機能について理解する

○金融の仕組みと働きについて、間接金融や直接金融の意義を含めて理解する(公民、商業)
○起業を支える金融の役割について、資金調達手段との関係を含めて理解する(公民)
○中央銀行の機能について理解を深める(公民、商業)
○技術革新に伴う決済機能など金融サービスの多様化とその暮らしへの影響について理解する(公民、情報、商業)

金利の働きについて理解する

○金利の機能と変動の理由について理解する(公民)

経済把握

ものやお金の流れと家計、企業、政府等の役割について理解する

○家計、企業、金融機関、政府、海外の間の財・サービス、お金、人の全体的な流れについて理解する(公民、商業)
○企業の成立、存在意義、社会的機能について理解する(公民、商業)

市場の働きや機能を知り、市場経済の意義を理解する

○市場経済、およびそこで行われる選択や競争の意義について理解する(公民、商業)
○商品市場、金融市場、証券市場、外国為替市場などの働きと機能を理解する(公民、商業)

産業の発展と海外経済との関係について理解する

○貿易、外国為替などの知識をもとに、経済のグローバル化について理解する(公民、地理歴史<歴史総合>、商業)

経済変動と経済政策

景気の変動と物価、金利、株価等の関係を理解する

○景気変動の要因と個人の生活への影響について理解する(公民、商業)
○インフレ、デフレの意味と暮らしへの影響について理解する(公民、商業)

中央銀行の金融政策について理解する

○中央銀行の金融政策の目的と手段について理解する(公民、商業)

政府の役割について理解する

○財政政策の目的を理解する(公民、商業)
○租税を中心とした公的負担の意義と必要性、国民の納税の義務について理解する(公民)
○政府が経済的な自由の保障、効率と公正の確保、成長と安定の追求などを目指して経済政策を行っていることを理解する(公民、商業)

景気変動や経済政策と自分の暮らしや社会との関係を理解する

○政府や中央銀行の経済政策と暮らしとの関係について理解する(公民、商業)
○政府の経済政策と財政赤字の関係について理解する(公民、商業)

経済社会の諸課題

経済社会が抱える問題について幅広く関心を持ち、情報収集の技能を身に付ける

○現代の経済社会の課題について多面的・多角的に情報を収集し、整理することができる(公民)

経済社会の課題解決に向けて合理的・主体的に考える態度を身に付ける

○課題の解決に向けて、自ら合理的、主体的にかかわり考える態度を身に付ける(公民)
○経済社会の課題解決に向けて、政府が行うべき施策について自ら考える態度を身に付ける(公民)
○財政の持続可能性の問題を考える(公民)

③ 高校生に求められる『消費生活・金融トラブル防止に関する分野』について

自立した消費者

消費者の権利と責任について理解し、それを生かす態度を身に付ける

○消費者契約法について理解する(公民、家庭、商業)
○消費者の権利と責任を自覚して行動する態度を身に付ける(家庭)
○消費者保護の重要性について、情報の非対称性の観点から理解する(公民、家庭)
○個人情報の保護について理解し、個人情報の保護にかかわる問題について関心をもつ(情報)

自立した消費者として行動するための基礎知識と態度を身に付ける

○契約の意味と留意点および契約に伴う責任について理解し、内容をよく確認して契約する態度を身に付ける(公民、家庭)
○成年年齢に達することの契約における意味を理解する(公民、家庭)
○契約に伴う手数料の負担について理解する
○環境や社会に配慮した生活が営めるようにライフスタイルを工夫する(公民、家庭)

消費生活に関する情報を適切に活用することができる技能を身に付ける

○情報通信技術等を活用して、情報を収集し、自分の消費生活に活用できる技能を身に付ける(家庭)

金銭トラブル・多重債務

消費者問題の発生する背景について理解し、お金との付き合い方について日頃から考える態度を身に付ける

○契約や消費者信用などに関する消費者問題が生じる背景について理解し、問題の発生を回避する態度を身に付ける(公民、家庭)

金銭トラブルや多重債務の実態を知り、巻き込まれない態度を身に付ける

○各種カードの役割や機能と使用上の留意点を理解し、適切に行動する態度を身に付ける(家庭)
○インターネット、携帯電話などによるトラブル事例を学び、予防の仕方を理解し、適切に行動する態度を身に付ける(家庭)
○ローンの金利とローン返済額との関係および金利負担について具体例を通して理解し、適切に行動する態度を身に付ける
○多重債務の現状を知り、安易な借入れを避ける(家庭)
○借入れに当たっては、生活設計の中で返済可能かどうか確認する必要があることを理解する

法律や制度を知り、それらを活用して事態に対処できる知識と技能を身に付ける

○消費者トラブルや労働条件などに関するトラブルに対処できる具体的方法を学び、実際に行使できる技能を身に付ける(公民、家庭)
○消費者トラブル、多重債務の相談窓口などを調べて、相談できる(公民、家庭)

③ 高校生に求められる『キャリア教育に関する分野』について

働く意義と職業選択

勤労の意義とお金の価値の重さを理解する

○勤労により収入を得ることが経済的自立の基盤であることを理解する
○働き方によって生涯所得に大きな差が生じることを理解する(公民、家庭)
○働き方の多様化の状況とその背景を理解する(公民)
○仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の意味を理解する(公民、家庭)

自分の職業選択について主体的に考える

○進路選択を通じて具体的に職業選択について考える(家庭、特別活動)
○進学、就職などに伴う支出や収入(大学での奨学金を含む)について試算し、それを参考にして進路選択について考える(家庭)
○自分の就きたい職業とその社会的意義について考える(公民、家庭、特別活動)

労働者の権利と義務について理解し、それを生かす態度を身に付ける

○労働者の権利と義務を理解し、労働条件を確認する態度を身に付ける(公民)

生きる意欲と活力

付加価値を生み出すために様々な努力が必要であることを理解する

○会社経営において付加価値を高めることの必要性を理解する
○企業会計の役割を理解する(公民、商業)

付加価値の創造が社会経済の原動力であることを理解する

○起業に必要な知識を身に付け、新たなビジネスについて考える(公民、商業)

自らの夢を描き表現の方法を考え、実現に向けて努力する態度を身に付ける

○将来の夢を実現するための現実的なステップや手段を考え、実践しようとする態度を身に付ける(家庭、特別活動)

社会への感謝と意欲

社会との様々なつながりを理解し、ルールを守り、他人に感謝する心を養う

○法やルールを遵守することは市場経済が十分機能する上で重要であることを理解する(公民)
○法やルールを遵守し、他人に損害を与えることがないように心
掛ける(公民、特別活動)

よりよい社会を築くためにみんなで協力することの意味を理解し、何ができるかを考え実行する態度を養う

○持続可能な社会やよりよい社会を展望し、それに向けて必要なことを考え実践しようとする(公民、地理歴史<地理総合>、地理歴史<歴史総合>、家庭)
○よりよい社会の実現に向けたお金の使い方をしようとする(家庭)
○企業の社会的責任と社会貢献の在り方について、自分の職業選択と関連付けて考える(公民、商業)

1級FP技能士/元銀行員
まくすけ(1級FP技能士)
こんにちは。まくすけです。 元メガバンクの社員です。 銀行での経験を活かして、金融教育に関する情報発信をしています。
\ Follow me /

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA