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【人事】ファイナンシャル・ウェルビーイング

 ファイナンシャル・ウェルビーイングという言葉を最近耳にするようになりました。そもそもウェルビーイングとは何なのでしょうか。

 国や民間でどのように言葉を使い分けているのか、調べてみました。

ウェルビーイング

ウェルビーイング(Well-being)とは

内閣府(Well-beingに関する関係府省庁連絡会議)の取組

 内閣府では、Well-being に関して、関係府省庁間の情報共有等を目的に、Well-being に関する取組について取りまとめています。第3回 Well-beingに関する関係府省庁連絡会議(2023年7月26日)の資料4『Well-being に関する取りまとめ作業方針』によると、Well-beingについて以下の通り言及しています。

Well-being について確立された定義はなく、身体的・精神的・社会的に「良い状態」を表す(慶応大学・前野隆司教授)といった定義がなされ、非常に幅広い概念であると解されています。

OECD が主観的 Well-being の計測に関するガイドラインを策定する等の状況を踏
まえ、主観的 Well-being の計測を重視するが、取りまとめにあたっては主観的 well-beingの計測以外の事項も含むものとする。

出所:内閣府『第3回 Well-beingに関する関係府省庁連絡会議(2023年7月26日) 資料4『Well-being に関する取りまとめ作業方針』』

明確な定義があるわけではないのか

まくすけ
まくすけ
抽象的には、身体的・精神的・社会的に「良い状態」のことを指しているんだね

主観的Well-being

 OECD Guidelines on Measuring Subjective Well-beingによると、主観的Well-beingについて、は以下のように触れられています。

肯定的な物から否定的なものまで、人々が自分の生活について行うあらゆる評価と、
人々が自身の経験に対して示す感情的反応を含む良好な精神状態。以下の3要素が含まれる。

● 生活評価:ある人の生活またはその特定側面に対する自己評価。
● 感情:ある人の気持ちまたは情動状態、通常は特定の一時点を基準にして測る。
● エウダイモニア(eudaimonia):人生における意義と目的意識、又は良好な精神的機能。

出所:内閣府『第3回 Well-beingに関する関係府省庁連絡会議(2023年7月26日) 資料2『経済財政運営と改革の基本方針における Well-being の記載』』

難しいな・・・

まくすけ
まくすけ
先ほどより具体性が増しているね。『生活面・感情面・エウダイモニア(あまり聞きなれないね・・・)』の要素が含まれるものになるということだね

主観的Well-beingの調査(満足度・生活の質に関する調査報告書2023)

 内閣府において、主観的指標である「満足度」や、関連する生活実態の動向を把握するため「満足度・生活の質に関する調査」を実施しています。

 具体的には13の分野に分けて生活満足度の測定調査を行っています。

  1. 家計と資産の満足度
  2. 雇用環境と賃金の満足度
  3. 住宅の満足度
  4. 仕事と生活の満足度
  5. 健康状態の満足度
  6. 自身の教育水準・教育環境の満足度
  7. 社会とのつながりの満足度
  8. 政治・行政・裁判所の満足度
  9. 自然環境の満足度
  10. 身の回りの安全の満足度
  11. 子育てのしやすさの満足度
  12. 介護のしやすさ・されやすさの満足度
  13. 生活の楽しさ・面白さの満足度

この統計調査においては、一番目に『家計と資産の満足度』が位置付けられていますね。

まくすけ
まくすけ
先ほどの3要素をさらにかみ砕いた形なので、項目は多いけれども具体性が増したね。

ファイナンシャル・ウェルビーイングについて

白背景の若葉

金融庁 2023事務年度 行政方針

 金融庁が8月29日に公表した行政方針内で、以下のとおり言及しています。

ファイナンシャル・ウェルビーイングについては、OECDが2023年4月に公表した「G20/OECD金融消費者保護ハイレベル原則に関する理事会勧告」では、「個人のファイナンシャル・ウェルビーイングとは、自律的および他律的な要因を踏まえて、自分の現在および将来の経済状況を管理し、これに安全を持ち、自由を持つことを指す」とされています。

自分の現在と将来の経済状況を管理することが、ポイントのようです。

民間の金融機関ではどのように定義しているのか

三井住友信託銀行

「ファイナンシャル ウェルビーイング」それは、安心して健やかに生きていくために、お金についての不安をとりのぞき、お金との健全な向き合い方ができている状態のことです。

出所:三井住友信託銀行『ファイナンシャル ウェルビーイングの実現

フィデリティ証券

フィデリティ・インターナショナルでは、お金の面から幸福度を測るモノサシとして「フィナンシャル・ウェルビーイング」という考え方をグローバルで紹介しています。客観的な「数字」と主観的な「感情」という2つの要素からお金の問題にアプローチする、フィデリティ独自のフレームワークです。

出所:フィデリティ証券『フィナンシャル・ウェルビーイング コラム

ファイナンシャル・ウェルビーイングという言葉をHPで出しているのはこの2つの金融機関が見つかったよ

まくすけ
まくすけ
民間の金融機関でも、定義が確立していないから、一部の金融機関が提唱している形なのかもしれないね

 今回はウェルビーイング~ファイナンシャル・ウェルビーイングについて、調べてみましたが、特にファイナンシャル・ウェルビーイングについては、まだ定義が確立しておらず、これから徐々に形になっていくような印象を受けました。

 少しずつ解像度が高まり、社会全体に浸透していく過程で、もやっとした今の定義がはっきりしてくるのだと思います。

1級FP技能士/元銀行員
まくすけ(1級FP技能士)
こんにちは。まくすけです。 元メガバンクの社員です。 銀行での経験を活かして、金融教育に関する情報発信をしています。
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