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【学校/高校】高校生で必要な金融教育について【金融リテラシー・マップ】

準拠・出典

金融広報中央委員会の『金融リテラシー・マップ』(2023年6月改訂版)の内容から、高校生の目指すべき姿の部分を抜粋し、まとめました。

金融リテラシー・マップとは

「最低限身に付けるべき金融リテラシー」を、年齢層別に、体系的かつ具体的に記したもので、「家計管理」「生活設計」「金融知識及び金融経済事情の理解と適切な金融商品の利用選択」「外部の知見の適切な活用」の4分野8項目から構成されます。

高校生が目指すべき姿

社会人として自立するための基礎的な能力を養う時期。

生涯を見通した生活設計の重要性や社会的責任について理解できる。進路選択などで主体的な判断も求められる。経済や金融に関する学習と、実践的な学習を関連させ、「ひとり立ち」を展望できる状態に近づけたい。

① 家計管理

全年齢で習得すべき内容について

適切な収支管理(赤字解消・黒字確保)の習慣化

  1. 家計の収支を適切に管理することが必要であることを理解し、習慣となっている
  2. 現状の収入や支出を的確に把握できる

高校生が習得すべき内容について

○資源の有限性、希少性を理解し、財やサービスの購入に当たって、よりよい選択ができる
○家計の収支構造を理解する
○現在の自分の生活や教育などのために支払われている費用を知り、家計全体を意識して自分にかかわる支出を考える態度を身に付ける
○長期的・計画的な資金管理の大切さを理解する
○実践的な収支管理(学校行事等)を行う
○現代の消費生活の課題を認識し、消費者として適切な意思決定ができる
○希少性、選択、トレードオフ、機会費用、効率、公正などの概念を用いて、よりよい意思決定ができる

② 生活設計

全年齢で習得すべき内容について

ライフプランの明確化およびライフプランを踏まえた資金の確保の必要性の理解

  1. ライフプランを明確にしている
  2. ライフプランを実現していくためには、経済的な裏付けとして資金を確保することが必要であることを理解し、必要な資金を貯蓄・運用、借入などにより計画的に準備していくことができる
  3. 自らの支出行為等(寄付、投資を含む)が社会にどのような影響を与え、社会にどのように貢献できるかを考え、自分の価値観に基づき、ライフプランや生活設計を考えることができる

高校生が習得すべき内容について

○将来の夢を実現するための現実的なステップや手段を考え、実践しようとする態度を身に付ける

○勤労により収入を得ることが経済的自立の基盤であることを理解する
○働き方によって生涯所得に大きな差が生じることを理解する
○働き方の多様化の状況とその背景を理解する
○様々な職業の社会的意義を踏まえながら、職業選択と進路選択・生活設計を関連付け、自分が就きたい職業について考える
○進学、就職などに伴う支出や収入(大学での奨学金を含む)について試算し、それを参考にして進路選択について考える
○仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の意味を理解する

○生涯収入や主な支出の内容について理解し、生活設計を立てる
○生涯を見通して資産形成を行う必要性を理解する
○長期的に貯蓄・運用に取り組む態度を身に付ける
○年金や社会保障制度などを理解し、自分たちの暮らしの中での役割を考える

○預金、株式、債券、投資信託、保険等の基本的な金融商品の特徴を理解し、関連する世の中の動きに関心をもつ
○住宅等の実物資産は、利用などにより減価し、売却しにくいことを理解する
○景気や経済政策と暮らしとの関係を理解する
○持続可能な社会やよりよい社会を展望し、それに向けて必要なことを考え、実践しようとする
○よりよい社会の実現に向けたお金の使い方をしようとする

③ 金融取引の基本としての素養

全年齢で習得すべき内容について

金融取引の基本としての素養

  1. 金融商品ほかの契約(取引を含む、以下同じ)を行う際には、契約内容および契約に伴う責任を確認し、理解できない契約は締結しないことが習慣となっている
  2. 契約締結後も、金融商品を巡る状況を定期的に確認(年間取引報告書等の確認)することが習慣となっている

情報の入手先や契約の相手方である業者が信頼できる者であるかどうかの確認の習慣化

  1. 金融取引を行う前に、情報の入手先や取引の相手方が信頼できる業者であるかどうかを確認することが習慣となっている

インターネット取引は利便性が高い一方、対面取引の場合とは異なる注意点があることの理解

  1. インターネット取引では、情報窃取、不正アクセス、誤発注、障害といった対面取引の場合とは異なる様々な危険が伴うことを理解している
  2. インターネット取引におけるトラブル予防の仕方を理解し、実行できる

高校生が習得すべき内容について

○契約の意味と留意点および契約に伴う責任について理解し、内容をよく確認して契約する態度を身に付ける
○成年年齢に達することの契約における意味を理解する
○契約に伴う手数料の負担について理解する
○消費者の権利と責任を自覚して行動する態度を身に付ける
○消費者契約法について理解する
○契約や消費者信用などに関する消費者問題が生じる背景について理解し、問題の発生を回避する態度を身に付ける
○個人情報の保護について理解し、個人情報の保護にかかわる問題について関心をもつ
○消費者トラブル、多重債務の相談窓口などを調べて、相談できる
○消費者保護の重要性について、情報の非対称性の観点から理解する
○環境や社会に配慮した生活が営めるようにライフスタイルを工夫する

○法やルールを遵守することは市場経済が十分機能する上で重要であることを理解する
○法やルールを遵守し、他人に損害を与えることがないように心掛ける

○情報通信技術等を活用して、情報を収集し、自分の消費生活に活用できる技能を身に付ける
○多重債務問題の現状を知り、安易な借入れを避ける

○インターネット、携帯電話などによるトラブル事例を学び、予防の仕方を理解し、適切に行動する態度を身に付ける

④ 金融分野共通

全年齢で習得すべき内容について

金融経済教育において基礎となる重要な事項(金利(単利、複利)、インフレ、デフレ、為替、リスク・リターン等)や金融経済情勢に応じた金融商品の利用選択についての理解

  1. 金融経済教育の基礎となる重要な事項(金利(単利、複利)、インフレ、デフレ、為替、リスク・リターン等)を理解している
  2. 金融経済情勢に応じた金融商品の利用選択について理解し、実践できる

取引の実質的なコスト(価格)について把握することの重要性の理解

  1. 金融商品を利用選択するに当たり、取引の実質的なコスト(価格)を十分に把握する

高校生が習得すべき内容について

お金や金融の働き

○貨幣の機能を理解する
○金融の仕組みと働きについて、間接金融や直接金融の意義を含めて理解する
○起業を支える金融の役割について、資金調達手段との関係を含めて理解する
○金利の機能と変動の理由について理解する
○中央銀行の機能について理解を深める
○電子マネー等のキャッシュレス社会の進行について理解する
○技術革新に伴う決済機能など金融サービスの多様化とその暮らしへの影響について理解する

貯蓄・運用

○生涯を見通して資産形成を行う必要性を理解する
○長期的に貯蓄・運用に取り組む態度を身に付ける
○預金、株式、債券、投資信託、保険等の基本的な金融商品の特徴を理解し、関連する世の中の動きに関心をもつ
○資金運用については、自己責任のもとで金融商品を選択する必要があることを理解する
○金融商品について、利益が出たり損失が出たりする特徴を踏まえて、リスクとリターンの関係について理解する
○様々な金融商品に資金を分散するなどのリスク管理の方法について理解する

○期間と金利(複利)の関係を理解する
○少額であっても定期的に貯蓄・運用し続けることが将来の備えとして有益であることを理解する

経済変動と経済政策

○景気変動の要因と個人の生活への影響について理解する
○政府や中央銀行の経済政策と暮らしとの関係について理解する
○中央銀行の金融政策の目的と手段について理解する
○政府の経済政策と財政赤字の関係について理解する
○インフレ、デフレの意味と暮らしへの影響について理解する

経済把握

○家計、企業、金融機関、政府、海外の間の財・サービス、お金、人の全体的な流れについて理解する
○市場経済、およびそこで行われる選択や競争の意義について理解する
○商品市場、金融市場、証券市場、外国為替市場などの働きと機能を理解する
○企業の成立、存在意義、社会的機能について理解する
○貿易、外国為替などの知識をもとに、経済のグローバル化について理解する

その他

○起業に必要な知識を身に付け、新たなビジネスについて考える
○会社経営において付加価値を高めることの必要性を理解する
○企業会計の役割を理解する
○現代の経済社会の課題について多面的・多角的に情報を収集し、整理することができる
○経済社会の課題解決に向けて、政府が行うべき施策について自ら考える態度を身に付ける

○財政の持続可能性の問題を考える
○財政政策の目的を理解する
○租税を中心とした公的負担の意義と必要性、国民の納税の義務について理解する
○政府が経済的な自由の保障、効率と公正の確保、成長と安定の追求などを目指して経済政策を行っていることを理解する
○企業の社会的責任と社会貢献の在り方について、自分の職業選択と関連付けて考える
○労働者の権利と義務を理解し、労働条件を確認する態度を身に付ける
○経済社会の課題の解決に向けて、自ら合理的、主体的にかかわり、考える態度を身に付ける

○預金、株式、債券、投資信託、保険等の基本的な金融商品の特徴を理解し、関連する世の中の動きに関心をもつ
○契約に伴う手数料の負担について理解する

⑤ 保険商品

全年齢で習得すべき内容について

自分にとって保険でカバーすべき事象(死亡・疾病・火災等)が何かの理解

  1. リスク管理の基本を理解している
  2. 保険商品を利用選択する前に、自分が何のリスク(死亡、疾病、火災、地震、介護等による損失や危険の発生の可能性)に備えるべきかよく整理したうえで判断できる
  3. 自分のニーズと保険商品の内容が合致しているかを確認することができる

カバーすべき事象発現時の経済的保障の必要額の理解

  1. 保険以外で賄える金額(社会保障、企業福祉、本人の貯蓄等)も勘案し、保険商品でどの程度の金額の備えが必要かを把握したうえで、保険商品を適切に利用、選択することができる

高校生が習得すべき内容について

○日常生活において様々なリスクが存在することを理解し、リスクを予測し制御して行動
する
○病気や事故などのリスクが現実となった場合の家計の負担の大きさを認識し、リスク管
理の方法を理解する
○不測の事態に備える方法としての保険と貯蓄の機能の違いを理解する

○社会保険と民間保険との補完関係を理解する
○二輪車(自転車を含む)や自動車の運転に伴い加害事故を起こした場合などには、責
任や補償問題が生じることを理解する

⑥ ローン・クレジット

全年齢で習得すべき内容について

住宅ローンを組む際の留意点の理解

① 無理のない借入れ限度額の設定、返済計画を立てることの重要性
② 返済を困難とする諸事情の発生への備えの重要性

  1. 住宅ニーズを考慮したライフプランを描いている
  2. 住宅ローンについて基本的な特徴を理解している
  3. 住宅ローンを組むに当たっては、必要な具体的知識を有している
  4. 自己の返済能力等に応じた適切な住宅ローンを組むことができる
  5. 必要に応じて返済計画を見直すことができる

無計画・無謀なカードローン等やクレジットカードの利用を行わないことの
習慣化

  1. ローン等を、生活設計の中で位置づけている
  2. カードローン等の消費者金融やクレジットカードの特徴とメリット・デメリットを理解している
  3. ローンやクレジットカードの返済を適切に履行しない場合には、重大な影響が生じ得ることを理解している
  4. 利用に当たっては慎重な姿勢をとることの重要性を理解し、無計画・無謀な利用を行わないことが習慣となっている

高校生が習得すべき内容について

○生涯収入や主な支出の内容について理解し、生活設計を立てる
○住宅ローンや貸与型の奨学金などのローンの仕組みを理解し、返済方法や金利、延滞時の影響について考える

○各種カードの役割や機能と使用上の留意点を理解し、適切に行動する態度を身に付ける
○ローンの金利とローン返済額との関係および金利負担について具体例を通して理解し、適切に行動する態度を身に付ける
○多重債務問題の現状を知り、安易な借入れを避ける
○借入れに当たっては、生活設計の中で返済可能かどうか確認する必要があることを理解する

⑦ 資産形成商品

全年齢で習得すべき内容について

人によってリスク許容度は異なるが、仮により高いリターンを得ようとする場合には、より高いリスクを伴うことの理解

  1. 自らの生活設計の中で、どのように資産形成をしていくかを考えている
  2. リスクとリターンの関係を正しく理解している
  3. 自らのリスク許容度を踏まえて合理的な選択ができる

資産形成における分散(運用資産の分散、投資時期の分散)の効果の理解

  1. 分散を行うことにより、リスクの低減を図ることができることを理解している

資産形成における長期運用の効果の理解

  1. 複利効果は長期投資になればなるほど高い効果が得られることを理解している
  2. 長期運用により価格変動リスクなどを平準化できることを理解している

高校生が習得すべき内容について

○預金、株式、債券、投資信託、保険等の基本的な金融商品の特徴を理解し、関連する世の中の動きに関心をもつ
○資金運用については、自己責任のもとで金融商品を選択する必要があることを理解する
○金融商品について、利益が出たり損失が出たりする特徴を踏まえて、リスクとリターン関係について理解する
○様々な金融商品に資金を分散するなどのリスク管理の方法について理解する
○どの程度のリスクをとることができるかは人によって異なることを理解する
○投資と投機、賭け事の違いについて理解する

○生涯を見通して資産形成を行う必要性を理解する
○長期的に貯蓄・運用に取り組む態度を身に付ける
○金融商品については、目先の価格の動きに目を奪われず、長期的な視点から運用を考え必要があることを理解する
○期間と金利(複利)の関係を理解する
○少額であっても定期的に貯蓄・運用し続けることが将来の備えとして有益であることを理解する

⑧ 外部の知見の適切な活用

全年齢で習得すべき内容について

金融商品を利用するに当たり、外部の知見を適切に活用する必要性の理解

  1. 金融商品を利用するに当たり、外部の知見を適切に活用する必要があることを理解している
  2. 金融商品の利用の是非を自ら判断するうえで必要となる情報の内容や、相談しアドバイスを求められる適切で中立的な機関や専門家等を把握し、的確に行動できる

高校生が習得すべき内容について

○預金、株式、債券、投資信託、保険等の基本的な金融商品の特徴を理解し、関連する世の中の動きに関心をもつ
○ローンの金利とローン返済額の関係および金利負担について具体例を通して理解し、適切に行動する態度を身に付ける
○資金運用については、自己責任のもとで金融商品を選択する必要があることを理解する
○金融商品について、利益が出たり損失が出たりする特徴を踏まえて、リスクとリターンの関係について理解する
○情報通信技術等を活用して、情報を収集し、自分の消費生活に活用できる技能を身に付ける
○消費者トラブルや労働条件などに関するトラブルに対処できる具体的方法を学び、実際に行使できる技能を身に付ける
○消費者トラブル、多重債務の相談窓口などを調べて、相談できる

留意点

マップの小学生から高校生までの部分については、金融広報中央委員会が「学校における金融教育推進のための懇談会」において学校教育関係の有識者の意見をもとに取り纏めた『金融教育プログラム』(2007年発刊)の「学校における金融教育の年齢層別目標」(2021年3月改訂、以下「年齢層別目標」という)の内容を当推進会議として確認・検討のうえ、整合性を確保しました。このように、高校生以下の「マップ」と『金融教育プログラム』の「年齢層別目標」の内容が整合的になっていることや、『金融教育プログラム』が実践事例等を含めて既に教育現場に定着していることに鑑み、高校以下の学校教育段階では、『金融教育プログラム』の「年齢層別目標」を基本に推進していくこととしています。

なお、高校生以下の「マップ」の教育内容は、学習指導要領または同解説に示された教科等の内容を反映していますが、学習指導要領および同解説に記述されていないもの(各教科における発展的な学習や、総合的な学習の時間および特別活動において実践されてきたものなどを中心に取りまとめたもの)も含んでいますので、申し添えます(詳細は、『金融教育プログラム』の「年齢層別目標」をご参照ください)。
金融教育プログラム「学校における年齢層別目標」

まとめ

マップの内容を高校生が習得することは大変難しいと思われます。次回は学校における年齢別目標について記事にしてみたいと思います。

1級FP技能士/元銀行員
まくすけ(1級FP技能士)
こんにちは。まくすけです。 元メガバンクの社員です。 銀行での経験を活かして、金融教育に関する情報発信をしています。
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